(translation of the previous post)
ヒラリー・クリントンが民主党の大統領予備選の本命に戻ったところで、“Foreign Affairs”の記事を読み返してみるのもいいのではないかと思いました。
ヒラリー・クリントンがForeign Affairsの「私が大統領に選ばれれば」シリーズに寄稿したエッセーは、日本の政官界のリーダーシップの間でかなりの動揺を引き起こしました。というのも、彼女が「我々と中国との関係は、今世紀で最も重要な二国間関係になる」と述べて、日本についてはほんのついでにしか言及しなかったからです。この動揺は、一つには、この人々の間で、一般的に言って共和党政権のときのほうがうまくいくと広く信じられている*ことに根ざしています。もっと具体的に言うと、かつてのクリントン政権のときは、中国に対しては全面的な友好外交を展開したのに、日米関係は通商問題をめぐる異例のとげとげしさの中で停滞しました。
では、これは、単に悪い連想が働いているだけなのでしょうか。いや、そんなことはありません。対外関係に関するクリントン氏のトップ・アドバイザーであるマデリン・オルブライト元国務長官、リチャード・ホルブルック元国連大使を始めその他クリントン・チームの面々の多くがクリントン政権(ややこしい)のときも枢要な役割を果たしていたのです。しかも、クリントン氏は、ファースト・レディー時代の8年間を自分の経験として援用しているのです。
だが・・・
第一に、対外関係で大きく取り上げられることは、いいことずくめというわけにはいきません。というのも、中国は、「21世紀に直面する国家、政府でない当事者、そして自然そのものからの脅威という、かつてない多種多様な挑戦的課題」のリストの中でまず登場するのです。「二つの戦争、グローバルなテロのネットワークに対する長期の戦い、そして、核兵器を取得しようとするイランとの緊張の高まり、成り行きが不明なままに再生を遂げるロシア、急速に成長する中国の国際システムへの統合、イスラエルを脅かすとともに石油供給の中断によって世界経済を崩壊させかねない中東の予測不可能かつ危険な状況、そして、気候変動及び世界規模の疫病の新たな波という長期的な脅威」といっしょくたにして言及されることには、いくらあまのじゃくでも喜びを感じることができないでしょう。第一、以前に本気でアメリカに挑戦状をたたきつけた時どうなったか、ご存知でしょう。
クリントン氏は、これら挑戦のそれぞれについて、自分の立場を説明していますが、「最も重要な二国間関係」というのも、こうした文脈で理解する必要があります。実際、クリントン氏は、日本は問題解決のほうから、ここで初めて言及して、「米国は、新しくクリーンなエネルギー源を開発し、より高い水準の省エネルギーを奨励し、気候変動と戦うために中国及び日本と共同プログラムに取り組むべきである」と書いています。
「同盟関係の強化」- これは明らかにブッシュ大統領のユニラテラリズムと彼女が描き出しているものと対照をなしている - は、こうした挑戦に取り組むための彼女の戦略の礎石の一つですが、これには、それなりにもっと心配すべき理由があります。昔からの三極のもう一つの極であるヨーロッパは、「同盟関係の強化」に関してはトップを占め、また、アジアでは、日本をインドと豪州と一緒くたにして「オーストラリア、インド、日本、そして米国が効力してテロとの戦い、気候変動を制限するための協力、グローバルなエネルギー供給の保全、経済発展の深化を含め、共通の関心事項について協力するすべを今以上に追求する必要がある」と述べています。彼女はさらに「欧米が協力すればグローバルな諸目標も実現可能になる」と述べていますが、結構なことで。また、アジアのスターはインドであって、「新興経済国として、また、世界でもっとも人口の多い民主主義国として特別の意義を持っている。上院のインド関係議員連盟の共同代表として、インドの勃興が与えてくれる素晴らしい機会、そして国連等の国際、地域諸機関でもっとインドの発言力を強化することの必要性を理解する」とも述べています。
だが、この、一見して目に付く不均衡には、意味を込めすぎないように気を付ける必要があります。というのも、ヨーロッパは、「同盟諸国を安心させること」が必要だという文脈の中で登場するからです。具体的には「安心と信頼というヨーロッパとの間の伝統的な関係を再構築しなければいけない」というわけです。インドはと言えば、「途方もない」とは言うものの、あくまでも「機会」なのです。というわけで、次のように考えることができるのではないでしょうか。つまり、クリントン上院議員の立場に立って考えると、日本との関係は(インドとは対照的に)成熟した安定的な関係であって、(ヨーロッパとは対照的に)癒しを必要としていないのです。別の言い方をすると、私たちは、昔、どのクラスにもいた、宿題をいつもきちんとやって、それ以外にも先生方に迷惑をかけることのなかった、あの目立たず、地味な男の子なのです。
で、それがそんなにまずいことなのでしょうか。国民の大部分がそれ以上のことを望んでもいないというのに。
* 1・2月号には、ビル・リチャードソン州知事がマイケル・ハッカビー元州知事とともにFAの紙面を飾っています。クリス・ドッド、ジョー・バイデン両上院議員は、掲載の機会を得る前に脱落しました。フレッド・トムソンは、もし残っていれば掲載されるでしょう。だが、ロン・ポール上院議員やデニス・クシニッチ下院議員まで載せてくれるでしょうか。
** セオドア・ルーズベルトは共和党、フランクリン・デラノ・ルーズベルトは民主党でした。
*** 注**をご参照のこと。
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